投稿日:2008-03-25 Tue
彼のデニムの後ろポケットには、いつも一つの小石が入っていた。それは彼の手によって念入りに磨き上げられていたようで、周囲の風景をその灰褐色へおぼろげに映し込んでいた。その小石は艶やかであった。卓上に垂らした水銀がそのまま凝固したならばあの小石と等質の光沢を持つだろう。形はやや平たい歪な楕円形。外反母趾の小指の先端部を連想させるような醜い形状であったように記憶している。いや、この小石の醜さは彼を嫌悪する今の私の心を反映しているだけなのかもしれない。正確にどのような形であったか今となっては確認の仕様もないだろう。
※私と彼は大学の研究室の同級(何を専攻?)
※私/彼=煙草/石
※夢遊病者のように歩く彼→ムユという暗語で呼称(誰も彼の名を覚えていないだろう)
私は脱ぎ捨てられた彼のデニムの後ろポケットから小石を取り出して、それを口に含んだ。(舐める描写を艶かしく→見たこともないほどの光沢、そこに映りこむ「私」の顔)
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